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京都地方裁判所 昭和63年(ワ)2187号 判決

東京都板喬区小豆沢三丁目四番三号

原告

株式会社田島製作所

右代表者代表取締役

田島庸助

静岡県三島市中二七七番地の四

原告

古屋憲男

静岡県三島市中二七七番地の四

右原告ら補助参加人

有限会社ミロク建装

右代表者代表取締役

古屋憲男

右原告ら及び補助参加人訴訟代理人弁護士

水田耕一

右輔佐人弁理士

野本陽一

京都市南区東九条松田町二四番地

被告

京都度器株式会社

右代表者代表取締役

村田芳三

右訴訟代理人弁護士

上羽光男

右輔佐人弁理士

服部敏夫

主文

一  被告は、別紙第二「物件目録B」記載の意匠の下げ振りを製造し、譲渡し、又は譲渡のために展示してはならない。

二  被告はその所有する前項の物件及び同物件を表示したカタログを廃葉せよ。

三  原告らのその余の請求を葉却する。

四  訴訟費用のうち、参加によって生じた部分は二分して、その一を補助参加人の負担とし、その余を被告の負担とし、その余の部分は二分して、その一を原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告は、別紙第一「物件目録A」記載の下げ振りを製造し、譲渡し、又は譲渡のために展示してはならない。

2  被告はその所有する前項の物件及び同物件を表示したカタログを廃葉せよ。

3  主文一、二項と同旨

4  訴訟費用は被告の負担とする。

二  被告

1  原告らの請求をいずれも葉却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二  請求原因

一  実用新案登録出願の仮保護の権利に基づく請求

1  本件仮保護の権利

原告株式会社田島製作所及び原告古屋憲男は、次の実用新案登録出願に係る実用新案法一二条一項所定の権利(以下「本件仮保護の権利」といい、本件仮保護の権利に係る考案を、以下「本件考案」という。)を共有している。

考案の名称 下げ振り

出願年月日 昭和五七年八月二三日

出願番号 昭五七-一二六一一四号

出願公告年月日 昭和六三年六月二日

公告番号 昭六三-一九七六四号

実用新案登録請求の範囲

別紙実用新案公報の該当欄記載のとおり

2  本件考案の構成要件

本件考案の構成要件は、次のとおりである。

(一)(1) 器筐内部に枢設した巻き取りドラムに吊紐の内端を連繋して捲回し、

(2) 該捲回方向に渦巻きばねを弾性付勢して、繰り出した吊紐を自動的に巻き取るように(して)なる

(3) 下げ振りの吊紐の繰り出し機構部において、

(二)(4) 上記巻き取りドラムの繰り出し部と器筐の導出口近傍(と)に固設した固定ピン間に、

(5) 器筐に対し適宜回動位置に固定可能になるがごとく枢設した

(6) 回動調節子に

(7) 二本の可動ピンを立設するとともに

(三)(8) 上記二本の可動ピンと当該二本の固定ピンに対して吊紐を経由摺接せしめるように構成し、

(9) 吊紐端に連繋した重量の異なる重鎮に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持つように(して)なる

(10) 吊紐繰り出し抵抗調節機構部を構成してなる

(四) ことを特徴とする下げ振り。

3  本件考案の作用効果

別紙実用新案公報の明細書によれば、本件考案の作用効果は次のとおりである。

本件考案の下げ振りは、別紙実用新案公報の第1図ないし第5図のとおり、使用する重鎮8の重量に合わせて吊紐繰り出し抵抗調節機構部6を調節して使用するもので、回動調節子11を回動変位することにより、第3図ないし第5図に示すごとく、第一固定ピン9と第二固定ピン10及び二本の可動ピン13、14の位置関係が変わり、第3図のように両固定ピン9、10の間の吊紐5が可動ピン13、14と関係しなくなる摩擦抵抗力が最小の位置から、第4図及び第5図のように固定ピン9、10と可動ピン13、14との捲回角度を変えてその摩擦面に作用する押圧力の差異により摩擦抵抗力を増大する位置まで変動する。

したがって、各位置にあらかじめ見合った重鎮8の吊下げ荷重を決めておくことにより、その重鎮8の荷重に適合する吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の調節位置を回動調節子11をセットするだけで選ぶことができ、重鎮8を引っ張ることにより巻き取りドラム4から渦巻きばね3に抗して繰り出された吊紐5は、重鎮8の荷重と吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の四本のピンと吊紐5の摩擦抵抗力が渦巻きばね3の弾力性と均衡して繰り出し位置に安定するものである。

使用後吊紐5を器筐1内に巻き込むためには、重鎮8を持ち上げるなりしてその荷重を解除すれば、吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の摩擦抵抗力は無くなり、渦巻きばね3の弾性復帰により巻き取りドラム4に巻き込まれる。

本件考案の下げ振りは、器筐外から吊紐繰り出し抵抗調節機構部の抵抗ピンの位置を変えることができ、この変動によって吊紐の経由路を変えて摩擦抵抗を変えるものであるため、調節操作が簡単であり、重鎮を変えることが容易になる。

また、本件考案の下げ振りは、吊紐繰り出し抵抗調節機構部を有して摩擦抵抗を重鎮の荷重に見合った大きさに設定するものであるため、いちいち摩擦抵抗を解除しなくても摩擦抵抗がかかっている状態のまま、重鎮や吊紐を手で引っ張るだけの操作で、自由に吊紐を繰り出して重鎮の吊り下げ高さを変えることができ、優れた操作性を備えている。

4  被告による本件物件Aの製造販売

被告は、昭和六三年七月ころから、別紙第一「物件目録A」記載の下げ振り(以下「本件物件A」という。)を製造・販売し、かつ、カタログ等により販売のための展示をしている。

5  本件物件Aの構成

本件物件Aの構成を分説すれば、次のとおりである。

(一)(1) 器筐1内部に枢設した巻き取りドラム4に吊紐5の内端を連繋して捲回し、

(2) 該捲回方向に渦巻きばね3を弾性付勢して、繰り出した吊紐5を自動的に巻き取るようにしてなる

(3) 下げ振りの吊紐5の繰り出し機構部において、

(二)(4) 上記巻き取りドラム4の繰り出し部と器筐1の導出口7近傍とに固設した回転可能のローラ9'、10'間に、

(5) 器筐1に対し適宜回動位置に固定可能になるがごとく枢設した

(6) 回動調節子11に、

(7) 小径パイプを貫挿して、可動のパイプ孔吊紐案内部材27を設け、その両端開口の左右相反する端縁部を半円形の丸みをつけた二個の摺接縁部13、14とするとともに、

(三)(8) 上記二個の摺接縁部13、14と前記二本の回転可能のローラ9'、10'に対して、吊紐5を経由摺接(ただし、ローラ9'、10'に対しては転接)せしめるように構成し、

(9) 吊紐5端に連繋した重量の異なる重鎮8に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持つようにして

(10) 吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'を構成してなる

(四) 下げ振り。

6  本件物件Aの作用効果

本件物件Aの下げ振りは、別紙第一「物件目録A」の第1図ないし第7図のとおり、使用する重鎮8の重量に合わせて吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'を調節して使用するもので、回動調節子11を回動変位することにより、第3図ないし第5図に示すごとく、回転可能のローラ9'、10'と回動調節子11の二個の摺接縁部13、14との位置関係が変わり、第3図のように回転可能のローラ9'、10'の間の吊紐5が摺接縁部13、14と関係しなくなる摩擦抵抗力が最小の位置から、第4図及び第5図のように回転可能のローラ9'、10'と摺接緑部13、14との捲回角度を変えてその摩擦面に作用する押圧力の差異により摩擦抵抗力を増大する位置まで変動する。

したがって、各位置にあらかじめ見合った重鎮8の吊下げ荷重を決めておくことにより、その重鎮8の荷重に適合する吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'の調節位置を回動調節子11をセットするだけで選ぶことができ、重鎮8を引っ張ることにより巻き取りドラム4から渦巻きばね3に抗して繰り出された吊紐5は、重鎮8の荷重と吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'の摺接縁部と吊紐5の摩擦抵抗力が渦巻きばね3の弾力性と均衡して繰り出し位置に安定するものである。

使用後吊紐5を器筐1内に巻き込むためには、重鎮8を持ち上げるなりしてその荷重を解除すれば、吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'の摩擦抵抗力は無くなり、渦巻きばね3の弾性復帰により巻き取りドラム4に巻き込まれる。

本件物件Aの下げ振りは、器筐外から吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'の回動調節子の位置を変えることができ、この変動によって吊紐の経由路を変えて摩擦抵抗を変えるものであるため、調節操作が簡単であり、重鎮を変えることが容易になる。

また、本件物件Aの下げ振りは、吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'を有して摩擦抵抗を重鎮の荷重に見合った大きさに設定するものであるため、いちいち摩擦抵抗を解除しなくても摩擦抵抗がかかっている状態のまま、重鎮や吊紐を手で引っばるだけの操作で、自由に吊紐を繰り出して重鎮の吊り下げ高さを変えることができ、優れた操作性を備えている。

7  本件物件Aと本件考案との構成の比較

(一)(1) 本件物件Aの構成要素(1)と本件考案の構成要件(1)とは、同一である。

(2) 本件物件Aの構成要素(2)と本件考案の構成要件(2)とは、同一である。

(3) 本件物件Aの構成要素(3)と本件考案の構成要件(3)とは、同一である。

(二)(4) 本件物件Aの構成要素(4)と本件考案の構成要件(4)とは、呼称は異なるが、同一である。

(5) 本件物件Aの構成要素(5)と本件考案の構成要件(5)とは、同一である。

(6) 本件物件Aの構成要素(6)と本件考案の構成要件(6)とは、同一である。

(7) 本件物件Aの構成要素(7)と本件考案の構成要件(7)とは、前者が、小径パイプを貫挿して、可動のパイプ孔吊紐案内部材27を設け、その両端開口の左右相反する端縁部を半円形の丸みをつけた二個の摺接縁部13、14としているのに対し、後者は、二本の可動ピンを立設している点において相違する。

しかしながら、可動のパイプ孔吊紐案内部材27に設けられた上記二個の摺接縁部13、14は、本件物件Aの構成要素(8)にみられる如く、前記二本の回転可能のローラ9'、10'間において、吊紐5を経田摺接せしめるように構成されているから、本件考案の二本の可動ピンが、本件考案の構成要件(8)にみられる如く、前記二本の固定ピンの間において吊紐を経由摺接せしめるように構成されているのと、吊紐に対する関係における構成は同一である。

右の点は、後に9項でさらに言及する。

(三)(8) 本件物件Aの構成要素(8)と本件考案の構成要件(8)とは、前者が可動のパイプ孔吊紐案内部材27に設けた二個の摺接縁部13、14と二本の回転可能のローラ9'、10'に対して吊紐5を経由摺接せしめるのに対し、後者が二本の可動ピンと二本の固定ピンに対して吊紐を経由摺接せしめる点において相違する。

しかしながら、(7)についてと同様に、前者における可動のパイプ孔吊紐案内部材27に設けられた二個の摺接縁部13、14と、後者における二本の可動ピンとは、吊紐に対する関係で構成を同じくするから、本件物件Aの構成要素(8)と本件考案の構成要件(8)とは、実質的に同一である。

右の点は、後に9項でさらに言及する。

(9) 本件物件Aの構成要素(9)と本件考案の構成要件(9)とは、同一である。

(10) 本件物件Aの構成要素(10)と本件考案の構成要件(10)とは、同一である。

(四) 本件物件Aと本件考案とは、ともに下げ振りであることにおいて、同一である。

8  本件物件Aと本件考案との作用効果の比較

3項と6項に記載のとおり、本件物件Aの作用効果と本件考案の作用効果とは同一である。

9  本件考案の構成要件(7)(8)と本件物件Aの構成要素(7)(8)について

(一) 前記のとおり、本件考案の構成要件(7)は、二本の可動ピンを立設するという構成であるのに対し、本件物件Aの構成要素(7)は、小径パイプを貫挿して、可動の吊紐案内部材27を設け、その両端開口の相反する端縁部を半円形の丸みをつけた二個の摺接縁部13、14とするという構成である点において、両者間に相違がみられる。

また、本件考案の構成要件(8)は、二本の可動ピンと二本の固定ピンに対して吊紐を経由摺接せしめるうに構成したものであるのに対し、本件物件Aの構成要素(8)は、上記二個の摺接縁部13、14と二本の回転可能のローラ9'、10'に対して吊紐を経由摺接せしめるように構成したものである点で、両者間に相違がみられる。

(二) 本件考案においては(以下別紙実用新案公報記載の図面による.)、巻き取りドラム4の繰り出し部と器筐1の導出口7近傍とに固設した固定ピン9、10間に、器筐1に対して適宜回動位置に固定可能になる如く枢設した回動調節子11を設け、これに二本の可動ピン13、14を立設した目的は、右二本の可動ピン13、14と二本の固定ピン9、10に対して吊紐5を経由摺接せしめるように構成し、回動調節子11を回動変位することにより、第3図ないし第5図に示す如く、固定ピン9、10と可動ピン13、14による吊紐5の捲回角度を変えて、その摩擦面に作用する押圧力の差異により摩擦抵抗力を増減し、それによって、吊紐5端に連繋した重量の異なる重鎮8に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持たせることにある。

(三) 本件物件Aにおいては(以下別紙第一「物件目録A」の図面による。)、巻き取りドラム4の繰り出し部と器筐1の導出口7近傍とに固設した回転可能のローラ9'、10'間に、器筐1に対して適宜回動位置に固定可能になる如く枢設した回動調節子11を設け、これに小径パイプを貫挿して可動のパイプ孔吊紐案内部材27を設け、その両端開口の左右相反する端緑部を半円形の丸みをつけた二個の摺接部13、14とした目的は、右二個の摺接縁部13、14と二本の回転可能のローラ9'、10'に対して吊紐5を経由摺接せしめるように構成し、回動調節子11を回動変位することにより、第3図ないし第5図に示す如く、回転可能のローラ9'、10'と摺接縁部13、14による吊紐5の捲回角度を変えて、その摩擦面に作用する押圧力の差異により摩擦抵抗力を増減し、それによって、吊紐5端に連繋した重量の異なる重鎮8に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持たせることにある.

(四) 右に明らかなとおり、本件考案の回動調節子11に設けられた二本の可動ピン13、14と、本件物件Aの回動調節子11に設けられた二個の摺接縁部13、14とは、ともに回動調節子11を回動変位することにより、それらと固定ピン9、10又は回転可能のローラ9'、10'とによる吊紐5の捲回角度を変えて、その摩擦面に作用する押圧力の差異により摩擦抵抗力を増減し、それによって、吊紐5端に連繋した重量の異なる重鎮8に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持たせるという作用効果において、両者同一であり、その技術思想を共通にするものである。

したがって、本件考案の構成要件(7)及び(8)を、本件物件Aの構成要素(7)及び(8)にそれぞれ置換しても、その作用効果には変わりがないから、両者間には置換可能性がある。

(五) 本件考案において、二本の可動ピン13、14は、回動調節子11の回動変位により、吊紐の捲回角度を変えて、吊紐と摺接する部分における摩擦面に作用する押圧力の差異を生ぜしめる役割を果たすものであるから、二本の可動ピンの間に吊紐を通して、該可動ピンに吊紐を摺接させることに替えて、小径のパイプを貫挿した吊紐案内部材の中に吊紐を通し、その両端開口の左右相反する端縁部を半円形の丸みをつけた摺接縁部として、該摺接縁部に吊紐を摺接させるものとすることは、本件考案の属する技術の分野における通常の知識を有する者が、本件考案に基づいて容易に想到しうるところである。

けだし、本件考案の実用新案登録出願前において、パイプの中を紐を通すということは、一般に広く行われていたところであり、パイプの方向と紐の方向とが一致すれば両者間に抵抗がなく(抵抗が最小であり)、パイプの方向と紐の方向とが作る角度が大きくなればなる程両者の抵抗が増加することは、広く認識されていたところだからである。

したがって、本件考案の構成要件(7)及び(8)を、本件物件Aの構成要素(7)及び(8)をもってそれぞれ置換することには、置換自明(容易)性がある。

(六) 以上にみたどころから明らかなとおり、本件物件Aの構成要素(7)及び(8)は、本件考案の構成要件(7)及び(8)とそれぞれ均等である。

よって、本件物件Aは、本件考案の構成要件(7)及び(8)を具備するものである.

10  請求

以上の次第で、本件物件Aを製造、販売又は販売のために展示する被告の行為は、原告らの本件実用新案登録出願に係る仮保護の権利を侵害するものであるので、原告らは、被告による本件物件Aの製造、譲渡及び譲渡のための展示の禁止、並びに侵害行為を組成した物である被告の所有する本件物件A及び同物件を表示したカタログの廃棄、を求める。

二  意匠権に基づく請求

1  本件意匠権

原告田島製作所及び原告古屋憲男は、次の意匠権(以下「本件意匠権」といい、その内容たる意匠を以下「本件登録意匠」という。)を共有している。

登録番号 五七二七六一号

意匠に係る物品 下げ振り用糸巻

出願年月日 昭和五五年九月一日

登録年月日 昭和五六年一二月二五日

登録意匠 別紙意匠公報の該当欄記載のとおり

2  本件登録意匠

本件登録意匠は、下げ振り用糸巻の形状に関するものであって、次の点に特徴を有するものである。

(一) 高さ、幅及び厚さの比が、ほぼ九対八対二・三である直方体の下部の一隅を、その正面の面積比にして約一六分の一相当部分、直線をもって斜めに三角形状に切り欠いた形状の器筐部と、石器筐部の片側側面上部より突出するほぼ円筒状の止針のつまみ部と、石器筐部の下部より下方に延長される吊紐及びほぼ円錐形の重鎮からなる。

(二) 器筐部の一側面(止針のつまみが突出している側とは反対の側面)には、その中央部にその側面の高さのほぼ半分の長さの長方形の磁石が縦にとりつけられ、石磁石の上方には、止針の突出用の円形の小穴及びアングルと嵌合する横溝が、また石磁石の下方には、丸セパレータを嵌合させる円孔及び重鎮を面一にセットする場合に使用する吊紐かけ用の線状のピンが設けられている。

(三) 前記吊紐かけ用のピンが設けられている部分において、器筐部の角が舌状に小さく下方へ突出している。

3  被告による本件物件Bの製造販売

(一) 被告は、昭和六三年七月ころから、別紙第二「物件目録B」記載の意匠の下げ振り(以下「本件物件B」という。)を製造・販売し、かつ、カタログ等により販売のための展示をしている。

(二) 本件物件Aと本件物件Bとは、商品としては同一である。しかしながら、自然法則を利用した技術的思想の創作である「考案」と、視覚を通じて美感を起こさせる創作である「意匠」とは、検討の観点を異にするので、意匠の面からは、被告の商品は物件目録Bと解される。

4  本件物件Bの意匠

本件物件Bは、下げ振り用糸巻であり、その形状の特徴は次の点にある。

(一) 高さ、幅及び厚さの比が、ほぼ一〇・五対八対二・三である直方体の下部の一隅を、その正面の面積比にして約一〇分の一相当部分、直線をもってやや横斜めに切り欠き、その切り欠いた三角形の部分の長さにおいて約三分の二に相当するものをその厚さを減じてもとの位置に付加した形状の器筐部と、石器筐部の片側側面上部より突出するほぼ円筒状の止針のつまみ部と、石器筐部の下部より下方に延長される吊紐とからなる。

(二) 器筐部の一側面(止針のつまみが突出している側とは反対の側面)には、その中央部にその側面の高さのほぼ半分の長さの長方形の磁石が縦にとりつけられ、石磁石の上方には、正面が小さい長方形の自在フック及び止針の突出用の円形の小穴が、また石磁石の下方には、重鎮を面一にセットする場合に使用する吊紐かけ用の線状の短いピンが設けられている。

(三) 前記止針のつまみが突出している器筐部の側面には、石つまみの下方に、ごく小さい直方体状に突出した止針の安全ロックが設けられている。

(四) 器筐部の背面には、上部隅に自在フック用の円形の固定ノブ、下部に側方への突起を有する円形状の調整レバーと爪形のストッパーが設けられている。

5  本件登録意匠と本件物件Bの意匠との対比

(一) 本件登録意匠の特徴(一)と本件物件Bの意匠の特徴(一)とを比較すると、器筐部について、直方体の高さ、幅及び厚さの比において差異があり、また直方体の下部を斜めに切り欠いた部分の面積比も異なり、切り欠いた斜めの方向にも相違があるが、それらはいずれも微差であり、器筐部が直方体の下部の一隅を斜めに切り欠いた形状であるという本件登録意匠の顕著な特徴を本件物件Bの意匠も具備している点においては、両者は類似する。

また、本件物件Bにおいては、斜めに切り欠いた三角形の部分の長さにおいて約三分の二に相当するものをその厚さを減じて、すなわち後退した表面をもってもとの部分に付加した形状がとられているが、切り欠き部分の斜直線が「表」の形状を決定していて、付加された部分の線は「影」の形状を決定しているに過ぎないので、石の部分の付加をもってしても、直方体の下部の一隅を斜めに切り欠いたという全体の形状上の前記特徴は看者に明瞭に認識されるので、両者の類似性は損なわれない。

さらに、本件登録意匠においては、器筐部の片側側面上部よりほぼ円筒状の止針のつまみ部が器筐部の横幅の四分の一強突出して、看者の注目を惹く形状をなしているが、この点は本件物件Bの意匠においても同様であり、突出の度合いが横幅の約三分の一とやや強いものの、両者全く共通の印象を与えるものである。

本件登録意匠においては、器筐部の下部より下方に吊紐が延長され、かつそれに円錐形の重鎮がつけられているが、重鎮自体は、必要とする重さによって付け替えて使用するものであるから、もともと下げ振り用糸巻とは、物品として一体をなさないものであるとともに、吊紐の先に円錐形の重鎮を下げることは、下げ振りにおいて周知の形状であったから、重鎮自体は本件登録意匠の要部をなすものではない。本件物件Bには重鎮はつけられていないが(ただし、それを購入した者は、使用にあたり必ず重鎮を取りつけることになる)、石の理田により、重鎮がついていないことは、本件物件Bの意匠が本件登録意匠に類似することを否定する根拠となるものではない。両者は、器筐部の下部より下方に吊紐が延長されている点において類似するのである。

(二) 本件登録意匠の特徴(二)と本件物件Bの特徴(二)とを比較すると、両者とも、器筐部の一側面(止針のつまみが突出している側とは反対の側面)の中央部に、その側面の高さのほぼ半分の長さの長方形の磁石が縦にとりつけられているという顕著な特徴において共通であり、両者間には強い類似性がある。

また、右磁石の上方には、止針の突出用の円形の小穴が、右磁石の下方には、重鎮を面一にセットする場合に使用する吊紐かけ用の線状の短いピンが横位置に設けられている点でも、両意匠は共通である。

本件登録意匠にあっては、前記磁石の上方にアングルと嵌合する横溝が、また右磁石の下方には丸セパレータを嵌合させる円孔が設けられているのに対し、本件物件Bの意匠には、それが設けられておらず、また本件物件Bの意匠では、前記磁石の上方に正面が小さい長方形の自在フックが設けられているのに対し、本件登録意匠にはこれがないという差異があるが、これらは両意匠の全体の形状からみていずれも微差であり、両意匠の全体としての類似性を損なうものではない。

(三) その他、本件登録意匠の特徴(三)が本件物件Bの意匠になく、また本件物件Bの意匠の特徴(三)及び(四)が本件登録意匠にはないという点で、差異が認められるが、これらはいずれも部分的な形状の差異にすぎないから、両意匠の全体としての類似性を損なうものではない。

(四) 本件登録意匠は、木、鉄、アルミ等に、ワンタッチで取りつけることのできる自動巻き込み式の下げ振り用糸巻を、わが国で始めて提供するにあたり、創作されたものである。

本件意匠登録出願前には、この種の商品は存在しなかったものであるから、本件登録意匠における、直方体の下部の一隅を斜めに切り欠いた形状の器筐部と、その側面からほぼ円筒状の止針のつまみが突出し、かつその反対側の側面中央部に長方形の磁石が縦にとりつけられている形状は、全くユニークなものとして当業者の注目を惹いたのである。

このように他に例のなかった物品の形状である本件登録意匠については、類似性の認定判断にあたり、意匠の範囲が広く認定され、幅広い保護が与えられるものと考えなければならない。

(五) よって、本件物件Bの意匠は、本件登録意匠の形状上、看者の注意を惹く顕著な特徴部分(要部)をすべて具備しているものであるから、本件登録意匠に類似することが明らかである。

6  請求

以上の次第で、本件物件Bを製造、販売又は販売のために展示する被告の行為は、原告らの本件意匠権を侵害するものであるので、原告らは、被告による本件物件Bの製造、譲渡及び譲渡のための展示の禁止、並びに侵害行為を組成した物である被告の所有する本件物件B及び同物件を表示したカタログの廃棄、を求める。

第三  請求原因に対する原告らの認否

一  本件仮保護の権利に関して

1  請求原因一項1、2の事実は認める。

2  同3のうち、末尾の「自由に吊紐を繰り出して重鎮の吊り下げ高さを変えることができ、侵れた操作性を備えている。」とある部分の「自由に」を否認し、その余の事実はすべて認める。

3  同4の事実は認める。

4  同5ないし9の主張は争う。

二  意匠権に関して

1  請求原因二項1ないし4の事実は認める。

2  同5の主張は争う。自動巻き込み式下げ振り用糸巻は、本件登録意匠の出願前に公知例(実公昭四〇-一七四二七号)があり、原告らのものがわが国で最初のものではない。

第四  被告の主張

一  本件仮保護の権利に関して

1  本件仮保護の権利の存続の不確定性

(一) 被告は、本件考案の出願公告に対し、昭和六三年七月二六日特許庁長官に実月新案登録異議の申立てをした。

(二) 本件考案は、その出願前の実公昭二九-五三六七号より容易に実施できるものであり、実用新案法三条所定の登録要件を具備せず、拒絶の査定がなされるべきものである。

(三) また、原告らは、二本の可動ピンの間に吊紐を通すことに替えて、小径のパイプを貫挿した吊紐案内部材のなかに吊紐を通すことは、本件考案に基づいて容易に想到しうるばかりでなく、パイプの中に紐を通し、パイプの方向と紐の方向との作る角度によって抵抗を増減することは出願前に一般に広く行われており、両者は置換目明(容易)性があると主張するが、そうだとすると本件考案には進歩性がないことになるのであって、本件考案の仮保護の権利が存続しうるものか疑問である。したがって、仮に本件考案の登録性が認められたとしても、本件考案の技術的範囲は、実施例の可動ピン使用のものに限定されるべきである。

2  本件物件Aは本件考案の技術的範囲に属さない。

(一) 本件実用新案登録請求の範囲のうち、前段の「器筐内部に枢設した巻き取りドラムに吊紐の内端を連繋して捲回し、該捲回方向に渦巻きばねを弾性付勢して、繰り出した吊紐を自動的に巻き取るようになる下げ振りの吊紐の繰り出し機構部において、」の部分は、考案の対象物を特定、限定した前提要件であり、また、末段の「吊紐端に連繋した……抵抗調節機構部」の部分は、作用効果的記載の部分であって、いずれも本件考案のポイントをなすものではない。

本件実用新案登録請求の範囲の本体要件は、中段の「上記巻き取りドラムの繰り出し部と器筐の導出口近傍に固設した固定ピン間に、器筐に対し適宜回動位置に固定可能になるがごとく枢設した回動調節子に二本の可動ピンを立設するとともに上記二本の可動ピンと当該二本の固定ピンに対して吊紐を軽由摺接せしめるように構成し、」の部分であって、ここに本件考案のポイントがある。すなわち、本件考案では、固定ピンの存在と、適宜回動位置に固定可能とした可動ピンの存在が重要にして必須の構成要件である。

(二) しかるに、本件物件Aには、本件考案にいう固定ピンも可動ピンも存在せず、原告らがこれらに相当するものとしているものとしては、回転可能のローラとパイプ孔が存在するにすぎない。しかし、本件物件Aの回転可能のローラはピンと同一物ではなく、吊紐が経由する場合の摩擦の作用効果が、前者は転がり摩擦(摩擦係数は〇・〇一内外)であるのに対し、後者は滑り摩擦(摩擦係数は一設に〇・五以上)であって、相違するから、回転可能のローラを本件考案のピンと均等物ということはできない。

(三) また、本件考案の可動ピンと本件物件Aのパイプ孔とは、その作用効果においては均等であるといえるが、本件考案の出願前において、パイプの中を紐を通すということは一般に広く行われていた(吊紐の通る穴の軽由路を変えることにより、それぞれの重量に見合う摩擦抵抗力を容易に変更設定できることは、囲炉裏の鉄びんの吊下げに使用する自在かぎに見られるとおり、古くから、公知公用である)のであるから、本件考案の可動ピンの均等論の適用において公知のパイプ孔は除かれるべきである。

(四) よって、本件物件Aは、本件考案の重要にして必須の構成要件である固定ピン及び可動ピンを欠如し、均等論の適用を受けることもないので、本件考案の技術的範囲に異しない。

3  「自由に」について

原告らは本件考案、の作用効果として、「自由に」吊紐を繰り出すことができると主張(請求原因一項3末尾)し、本件考案はそのような作用効果を有しない、被告が前記異議申立において引用した前記実公昭二九-五三六七号や自在かぎとは異なると主張するが、本件実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明には「自由に」の用語はなく、公告後の訂正は極めて厳格な要件のもとでしか許されないし、そもそも「自由に」の用語は機能的な用語であって内容の不確定なものであるから、石「自由に」の用語を付加することによって、本件考案の技術的範囲を広げて解釈することは許されない。

二  意匠権に関して

1  本件登録意匠の無効事由

(一) 原告らが、本件登録意匠を、髙さ、幅及び厚さの比がほぼ九対八対二・三である直方体の下部の一隅をその正面の面積に比して約一六分の一相当部分直線で斜めに三角形状に切り欠いた形状であるとして特定するのは、意匠の権利範囲を数値で限定しようとするものであるが、原告ら主張のような寸法比、面積比の数値では数値範囲が不明確であり、切り欠き部の形状も三角形状というだけでは不特定であって、どこまでが意匠権の権利範囲となるのか不明確であるので、構成不特定として本件登録意匠には無効事由がある。

(二) よって、本件登録意匠の権利範囲は、意匠公報記載の図面のものに限定されるべきである。

2  本件登録意匠と出願前公知の意匠

(一) 下げ振りの直方体の一部を切り欠いた形状の意匠は、本出願前に公知例(英国特許第一、一七四、五四六号と実公昭四三-一一七三四号)がある。

(二) 止針のつまみ部の突出度合は本出願前に公知例(実開昭五〇-一二四九五五号)がある。

(三) 側面に磁石をとりつけることは、不出願前に公知例(前紀英国特許第一、一七四、五四六号、実開昭五〇-一二四九五五号、実公昭四四-一〇三三号)がある。また、磁石の長さは、設計の必要性から決まるものであり、意匠の要部とはいえない。

(四) 吊紐が器筐部の下部より下方に延長されている点は、本件出願前に公知例(前記実公四三-一一七三四号)がある。

3  本件物件Bの意匠は本件登録意匠に類似しない。

(一) 基本形態

(1) 本件登録意匠は、正面図において、基本形態が〈省略〉状であり、本件物件Bの意匠は〈省略〉状である。

(2) 本件登録意匠の物件も本件物件Bも立体であるので、本件登録意匠は三角形状立体であり、本件物件Bは四角形状立体てある。

(3) よって、本件登録意匠と本件物件Bの意匠とは、その正面における全体の基本構成が著しく異なる。

(二) 切り欠きの形状

(1) 本件登録意匠は、正面から見ると、直方形(矩形)から三角形の切り欠きをしている。本件物件Bは、正面からみると、直方形から四角形を切り欠いている。

(2) 切り欠き部分が、三角形であるか、四角形であるかの相違は、看者に強い印象を与え、惹きつける支配的要素である。

(3) 本件登録意匠での切り欠きは垂直線から約三〇度斜めに切り欠いたものであるのに対し、本件物件Bの意匠での切り欠きは垂直線から約七〇度斜めに切り欠いたものであるので、両者は著しく相違する。

(三) 下部

(1) 本件物件Bの意匠には、下部の幅五八ミリメートルの突出部がある。これは、本体の幅が八〇ミリメートルと広幅であるので、下部で把持が容易となるように機能上の工夫をしたものである。

(2) 本件物件Bの意匠は、突出部の最下端が水平となっている。これは、水平板に載置するときに直立安定性を保持できるためである。

(3) 本件登録意匠は、下部に突出部はなく、最下端には三角形突起があって、直立安定性を欠いている。

(四) 本件物件Bの意匠の意匠登録

(1) 被告は本件物件Bの意匠について意匠登録の出願をしていたが、平成元年九月二九日意匠登録の査定を受けた。

(2) したがって、特許庁としても、本件物件Bの意匠は、本件登録意匠に類似していないと判断したものである。

第五  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録の記載と同一てあるので、これを引用する。

理由

第一  本件仮保護の権利に基づく請求について

一  請求原因一項1、2の事実、末尾の「自由に」を除く同3の事実、同4の事実は当事者間に争いがない。

別紙実用新案公報の、実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明には、右「自由に」吊紐を繰り出す旨の記載はない。しかしながら、右「自由に」の意味は、「摩擦抵抗がかかっている状態のままで、重鎮や吊紐を手で引っばるだけで」ということを意味するものと解されるが、これは、本件考案の作用効果を説明するものであって、本件考案の要件を示すものではなく、かつ、右「摩擦抵抗がかかっている状態のままで、重鎮や吊紐を手で引っばるだけで」という作用効果は本件実用新案登録請求の範囲及び考案の詳細な説明の記載から明らかなところである。したがって、本件考案の作用効果の説明として、右「自由に」という用語を用いることは、何ら本件考案の技術的範囲を広げて解釈することにはならず、むしろ適切なものというべきである。

二  成立に争いのない甲第六、七号証、本件物件Aであることに争いのない検甲第一号証及び弁論の全趣旨によると、請求原因一項5、6の事実が認められる。

三  本件物件Aの構成と本件考案の構成

1  本件物件Aの構成と本件考案の構成を対比すると、本件物件Aの構成要素(1)ないし(3)、(5)、(6)、(9)、(10)、(四)と、本件考案の構成要件(1)ないし(3)、(5)、(6)、(9)、(10)、(四)は、同一であると認められる。本件物件Aの構成要素(4)と本件考案の構成要件(4)は、後者が固定ピン、前者が回転可能のローラと呼称を異にし、また前者の回転可能のローラには回転性が付与されているけれども、後者の固定ピン、前者の回転可能のローラはいずれも器筐内部に固設され吊紐を経由摺接させる部品にすぎないから、本件における構成の対比の点からいえば、本件物件Aの構成要素(4)と本件考案の構成要件(4)は、実質的には同一であり、前者は後者を充足するものと認められる。

2  しかし、本件物件Aには、本件考案の構成要件(7)の可動ピンがなく、したがって、本件考案の構成要件(8)の可動ピンに対し吊紐を経由摺接させるという構成にもなっていない。

3  本件実用新案登録請求の範囲の記載からみて、右可動ピンは本件考案の最も重要な要件であり、可動ピンに対し吊紐を経由摺接させるという構成が重鎮の荷重に対し摩擦抵抗力によって渦巻きばねの弾力性と均衡を保ち重鎮の位置を安定させるという作用効果をもたらすものである。

4  そうすると、本件物件Aは、可動ピンがなく、可動ピンに対し吊紐を経由摺接する構成になっていないのであるから、本件考案の最も重要な要件を欠くといわざるをえない。

5  もっとも、原告らは本件物件Aに可動ピンがないことは認めたうえで、本件物件Aには回動調節子を貫挿する小径パイプがあり、この小径パイプが本件考案の可動ピン二本と同一の作用効果を奏するから、両者間には置換可能性があり、右小径パイプをもって右可動ピンと置換することは、当業者にとって容易に想到しうるところであるから、推考容易性もあるとして、本件物件Aの構成要素(7)及び(8)は本件考案の構成要件(7)及び(8)とそれぞれ均等であると主張する。右の小径パイプと可動ピンとが同一の作用効果を奏するものであることは、被告の認めるところであり、右小径パイプをもって右可動ピンと置換することが本件考案の出願当時すでに当業者にとって容易に想到しうるものであったことも、弁論の全趣旨によって認められるが、原告らも当業者の一員であることは、弁論の全趣旨から明らかであるから、推考容易性の点からいえば、原告らは、本件考案の出願をするにあたって当業者として本件考案と同一の作用効果を生ずるものとして想到し得たいくつかの構成のうち本件考案のような可動ピンを使用する構成のみを選択して出願したものというべきであり、仮保護の権利が認められた後になってから、本件考案の構成要件のうち最も重要な要件につき、本件考案出願の際同時に出願しえたのに出願しなかった他の構成を均等であるとして、これにまで権利が及ぶと主張するようなことは許されないものといわなければならない。原告らの右主張は理由がない。

6  よって、本件物件Aは、本件仮保護の権利を侵害しているといえず、原告らの本件仮保護の権利に基づく請求は認容できない。

第二  意匠権に基づく請求について

一  請求原因二項1ないし4の事実は当事者間に争いがない。

二  被告は、原告らの本件登録意匠に関する請求原因二項2(一)の数値による説明を意匠権の権利範囲を定めるためのものであるとし、不明確な数値によって意匠権の権利範囲を定めることは相当でないとして権利の無効事由になると主張するが、原告らは本件登録意匠の説明の一つとして数値を掲げているに過ぎないのであるから、被告の右主張は失当である。

三  出願前公知の意匠について

1  成立に争いのない乙第九号証によると、英国特許第一、一七四、五四六号の意匠は、磁石つき下げ振りの特許明細書記載の図面に示されたものであるが、糸巻を内蔵した直方体の下部の一端を円弧状に切り欠いたものと認められ、直線で切り欠いたものではないので、切り欠きの形状において本件登録意匠とはまったく異なるものである。

2  成立に争いのない乙第一〇号証によると、実公昭四三-一一七三四号の意匠は、建築用糸巻の実用新案の明細書の図面に示されたものであるが、糸巻の外周側壁の角部を斜面状にカットしたものと認められ、直方体の下部の一端を切り欠いたものではないので、本件登録意匠とはまったく異なるものである。

3  成立に争いのない乙第一五号証によると、実開昭五〇-一二四九五五号の意匠は、磁石板を付設した木造、鉄骨兼用下げ振り器の実用新案の明細書の図面に示されたものであるが、糸巻を内蔵した直方体(ケース)の上に、止針及び水平打撃杵を積載したものと認められ、直方体のなかに止針を蔵置し、そのつまみ部のみを直方体の側端から突出させたものではないので、本件登録意匠とはまったく異なるものである。

4  前掲乙第九号証、同第一五号証、成立に争いのない乙第一六号証によると、下げ振り器の直方体の側端の全面に磁石を取りつけた意匠は、本件登録意匠の出願前から公知であったものと認められるが、側端の中央部のみに磁石のとりつけられた本件登録意匠は、これらとはやや相違がある。

5  前掲乙第一〇号証によると、建築用糸巻の吊紐を器筐部から下に延長する意匠は、本件登録意匠の出願前から公知であったものと認められる。

6  なお、成立に争いのない乙第一七号証によると、実公昭四〇-一七四二七号の意匠は、自動巻き込み式の測量用錐球補助器の実用新案の明細書の図面に示されたものであるが、最上部に装着したかぎによって、器筐を吊り架ける方式であって、本件のように止針または磁石等によってワンタッチでとりつけるものではたく、また、器筐が円盤状と認められ、直方体ではないので、本件登録意匠とはまったく異なる。

四  本件登録意匠の要部

成立に争いのない甲第二号証、前示争いのない本件登録意匠の特徴(請求原因二項2の事実)、前示公知意匠との対比及び下げ振り用糸巻という物品の特性からすると、本件登録意匠の要部は、〈1〉基本形態が直方体の器筐部の下部の一隅を直線をもって斜めに三角形状に切り欠き、〈2〉器筐部の切り欠かれた側の側面最上部に突出するほぼ円筒状のつまみ部があり、〈3〉その反対側側面の上部に止針の突出用の円形の小穴を備え、〈4〉その下の中央部に大きく縦長に磁石を取りつけている点にあり、なかでも、直方体の三角形状の切り欠きと突出した円筒状のつまみ部が他に例をみない最大の特徴であると解される。

五  本件登録意匠と本件物件Bの意匠との相違点

前掲甲第二号証、検甲第一号証、前示争いのない本件登録意匠の特徴、本件物件Bの意匠の特徴(請求原因二項4の事実)によると、本件物件Bの意匠は次の点で本件登録意匠と相違するものと認められる。

1  器筐部の高さ、幅及び厚さの比が一〇・五対八対二・三の比である(本件登録意匠は九対八対二・三の比である)。しかしながら、幅と厚さの比は両者同一であり、高さとの比において、本件物件Bの意匠の方が本件登録意匠よりやや高いに過ぎず、微差である。

2  直方体の下部の切り欠きが三角形状であるが、その斜辺の長さにして約三分の二相当部分を厚さを減じて、すなわち後退した表面をもって直方体をもとの部分に付加している(したがって、切り欠きによる欠損部分が三角形の全面にわたって正面から背面までまるまる欠損しているわけではない点において、本件登録意匠とは異なる)。しかしながら、右付加部分は、三角形の切り欠きを前提としたものであり、しかも切り欠きの斜線が顕著であることからすると、本件物件Bの意匠に三角形の切り欠きがあることに変わりはなく、基本形態は両者同一といってよい。

3  直方体の下部を斜めに切り欠く角度が、垂直線から約七〇度である(本件登録意匠では約三〇度である)。しかしながら、右角度の相違は、意匠の相違として明瞭に意識される程のものではなく、微差である。被告は、本件登録意匠には無効事由があるとして、本件登録意匠の権利範囲は意匠公報記載の図面のものに限定されるべきであると主張し、右主張を前提として、右角度の相違をも本件物件Bの意匠が本件登録意匠の権利範囲に属しないとする理由に挙げるようであるが、右の被告が無効事由として主張する点の理由がないことは、前記のとおりであるのみならず、意匠の類否は、要部を対比し全体的に観察してなすべきものであり、登録意匠に無効事由があるからといって、公知意匠等の存在により要部が限定されることがあるのは格別、さもなければ登録意匠の権利範囲を意匠公報記載の図面のものに数値的に限定してなすべきようなものではないから、被告の右主張はその自体理由がない。

4  器筐部の下端が水平面状である(本件登録意匠では器筐部の下端が水平面より少し傾斜し、また磁石の下方部分に三角形状の小突起があるので、全体としては水平面状ではない)。しかしながら、これらは局部的な相違であり、微差である。

5  側端上部の突出した止針つまみ部の下に小さな安全ロックがついている(本件登録意匠には安全ロックがついてない)。しかしながら、これは局部の付加的なものである。

6  側端(突出した止針つまみ部と反対側)上部に、上及び横に伸長可能な自在フックがとりつけられているが、アングルと嵌合する横溝がない(本件登録意匠には自在フックはなく、アングルと嵌合する横溝がある)。しかしながら、自在フックは器筐部に収納された状態では目立たないので、意匠上の特徴としては小さく、横溝が存しないのは微差である。

7  側端中央部の磁石の位置が、正面図においても、明確である(本件登録意匠の正面図では不明確である)。しかしながら、これは微差である。

8  背面には、上部一隅に自在フックを操作する円形のノブがあり、下部には円形状の調節レバーと爪形のストッパーがある(本件登録意匠は正面図と背面図とが同一であり、これらはついていない)。しかしながら、これらは局部の付加的なものである。

9  器筐外側の角部が丸みを帯びている(本件登録意匠では角部は角張ったままである)。しかしながら、これは微差である。

10  吊紐に吊紐係止端子がついている(本件登録意匠にはこれがついていない)。しかしながら、これは局部の付加的なものである。

六  本件登録意匠と本件物件Bの意匠の類似点

前掲甲第二号証、検甲第一号証、前示争いのない本件登録意匠の特徴、本件物件Bの意匠の特徴(請求原因二項4の事実)によると、本件物件Bの意匠は次の点で本件登録意匠と類似するものと認められる。

1  下げ振り用糸巻を内蔵した直方体状の器筐の意匠であり、使用するときは器筐から下方に延びた吊紐に重鎮をつけること

2  直方体の下部の一隅を直線で三角形状に切り欠いていること

3  片側側面上部にほぼ円筒状の止針の突出部がついていること

4  その反対側側面の上部に止針の突出用の円形の小穴があり、その下の中央部に磁石が縦長についていること

七  類否の判断

以上認定の本件登録意匠の要部、本件登録意匠と本件物件Bの意匠との相違点、類似点からすれば、本件物件Bの意匠は、前示本件登録意匠の要部〈1〉ないし〈4〉全部を備えており、他方前示相違点のうち1、3、4、6、7、9は本件登録意匠の要部からすると微差に過ぎず、同2、5、8、10は本件登録意匠を基礎にした部分的、付加的な形態変化であるので、本件物件Bの意匠は、本件登録意匠に類似するものと認めるのが相当である。

原本の存在と成立に争いのない乙第二七号証の一、四、成立に争いのない乙第二七号証の二、三、同第二八号証によると、本件物件Bの意匠について被告のなした意匠登録出願に対し、平成元年九月二九日登録の査定がなされたものと認められるが、この事実をもってしても、右類似の判断を左右するにたりない。

そうすると、原告らの意匠権に基づく請求は理由がある。

第三  結論

よって、原告らの本件仮保護の権利に基づく請求は棄却することとし、意匠権に基づく請求は認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法九四条、九二条本文、八九条、九三条一項本文を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 露木靖郎 裁判官 井〓正明 裁判官 飯塚圭一)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉実用新案出願公告

〈12〉実用新案公報(Y2) 昭63-19764

〈51〉Int. Cl. G 01 C 15/10 識別記号 庁内整理番号 7119-2F 〈24〉〈44〉公告 昭和63年(1988)6月2日

〈34〉考案の名称 下げ振り

〈21〉実願 昭57-126114 〈65〉公開 昭59-31011

〈22〉出願 昭57(1982)8月23日 〈43〉昭59(1984)2月27日

〈72〉考案者 田島庸助 東京都文京区本駒込6丁目7番14号

〈72〉考案者 古屋憲男 静岡県三島市中292-6

〈71〉出願人 株式会社田島製作所 東京都板橋区小豆沢3丁目4番3号

〈71〉出願人 古屋憲男 静岡県三島市中292-6

〈74〉代理人 弁理士 野本陽一

審査官 青木和夫

〈57〉実用新案登録請求の範囲

器筐内部に枢設した巻き取りドラムに吊紐の内端を連繋して捲回し、該捲回方向に渦巻きばねを弾性付勢して繰り出した吊紐を自動的に巻き取るようになる下げ振りの吊紐の繰り出し機構部において、上記巻き取りドラムの繰り出し部と器筐の導出口近傍に固設した固定ピン間に、器筐に対して適宜回動位置に固定可能になるごとく枢設した回動調節子に2本の可動ピンを立設するとともに上記2本の可動ピンと当該2本の固定ピンに対して吊紐を経由摺接せしめるように構成し、吊紐端に連繋した重量の異なる重鎮に対して荷重に見合つた摩擦抵抗力を持つようになる吊紐繰り出し抵抗調節機構部を構成してなることを特徴とする下げ振り.

考案の詳細な説明

本考案は下げ振りの改良に関するもので、とくに吊紐を重鎮荷重が解除された時に器筐内に自動的に巻き込むようになる下げ振りにおいて、重量の異なる重鎮をワンタツチで選択使用することができる下げ振りを提供することを目的とするものである.

従来、自動巻き取り式の下げ振りは繰り出した吊紐を繰り出し部においてロツクする方式のものが多種使用されていたが、ロツク装置が使用中に外れると重鎮の吊紐が急速に巻き込まれ非常に危険であり、重鎮の荷重が解除されると吊紐が器筐内に収容される構造のものも考案されている.しかし、この種のものは巻き取りドラムを駆動する渦巻きばねと重鎮の荷重および繰り出し部の摩擦抵抗の均衡によつて安定を保つているため、重鎮の重量を変えると使用不能となる欠点を有するものであつた.

本考案は上記問題に鑑みなされたもので、繰り出し部の抵抗摩擦力を吊紐を複数のピンを経由して変量する構造において、該ピンの立設位置関係を器筐外からの回動操作によつて変動せしめるように構成したものである.

以下、本考案下げ振りの一実施例を図面にしたがつて説明すると、第1図は器筐の一側を外した状態の正面図であり、器筐1の中央部には固定軸2に内端を固着した渦巻きばね3を介して該渦巻きばね3の外端に糸巻き筒部4aを固着した巻き取りドラム4が上記固定軸2に対して回動自在に枢設されるとともに、巻き取りドラム4の一部に内端を連繋した吊紐5を上記渦巻きばね3の縮回する方向に捲回し、その外端を吊紐繰り出し抵抗調節機構部6を経由して器筐1の導出口7より導出し、その端部に逆円錘状の重鎮8を連繋してなる.上記吊紐繰り出し抵抗調節機構部6は巻き取りドラム4の導出部近傍に位置する第一固定ピン9と上記導出口近傍に位置する第二固定ピン10および、両固定ピン間に位置するとともに、器筐側板1aに対して枢設した回動調節子11の軸部12間に架設した2本の可動ピン13、14かなる.当該軸部材12の一端は円柱状になり、1aの軸孔に対して回動自在になるととも

他端部には外周方向に突出した係合小突起115…が等配され、該小突起15は側板1a側端面に形成した係合凹部16、16…に嵌係合すると同時に軸部材12と側板1a間に介たコイルスプリング17の弾性に抗して軸部12を矢印X方向に押し出すと、係合突起15係合凹部16から外れて自由回動するようにな

これを回動して可動ピン13、14の位置をるこきるもので、上記軸部材12の端こは指標8が刻設され、側板1aに表記され荷重目盛18aの選択位置を指示する.

また図中19は木部用取り付け機構であり先端ピン20を固着した摺動軸21の後端を器筐の一端から突出するとともに、コイルスプリン22により常時後方に弾性付勢したもので、摺軸を押圧すると刺ピン20が取付面1bに設けピン孔23から突出する.さらに取付面1bはアルミサツシ等の薄肉部取付切欠24および体部取付用永久磁石25が設けられるととも、器筐1の底部には該取付面1b端部に案内ピ26が立設され、前記導出口7から繰り出した紐5を取付面1bに沿つて導出する場合に経由ることができる.

上記構成になる下げ振りは使用する重鎮8の重に合わせて吊紐繰り出し抵抗調節機構部6を調して使用するもので、回動調節子11を回動変することにより、第3図ないし第5図に示すごく、第一固定ピン9と第二固定ピン10および本の可動ピン13、14の位置関係が変り、第図のよ両固定ピン9、10間の吊紐5が可ピン13、14と関係しなくなる摩擦抵抗力が小の位置から第4図および第5図のごとく固定ン9、10と可動ピン13、14の捲回角度をえてその摩擦面積の量的差異により摩擦抵抗力増大する位置まで変動する.したがつて、各位にあらかじめ見合つた重鎮8の吊下げ荷重を決めておくことにより、その重鎮8の荷重に適合する吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の調節位置を回動調節子11をセツトするだけで選ぶことができ、重鎮8を引張ることにより巻き取りドラム4から渦巻きばね3に抗して繰り出された吊紐5は重鎮8の荷重と吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の4本のピンと吊紐5摩擦抵抗力が渦巻きばね3の弾性力と均衡して繰り出し位置に安定するものである.

使用後吊紐5を器筐1内に巻き込むためには重鎮8を持ち上げるなりしてその荷重を解除すれば、吊紐繰り出し抵抗調節機構部6の摩擦抵抗力は無くなり、渦巻きばね3の弾性復帰により巻き取りドラム4に巻き込まれる.

上記実施例は下げ振りの一実施例であるが、吊紐の巻き取り部の機構については巻き取り量を増大するために複数の歯車を組合わせて渦巻きばね端部の回動数を巻き取りドラムと増幅伝達するように構成することもできる.

以上述べたように本考案の下げ振りは器筐外から吊紐繰り出し抵抗調節機構部の抵抗ピン位置を変えることができ、この変動によつて吊紐の経由路を変えて摩擦抵抗を変えるものであるため、調節操作が簡単であり、重鎮を変えることが容易になるもので、本考案の実用的効果はきわめて大きい.

図面の簡単な説明

図面は本考案下げ振りの一実施例を示すもので、第1図は器筐の一側を外した状態の正面図、第2図は第1図におけるA-A線断面図、第3図ないし第5図は吊紐繰り出し抵抗調節機構部の作用を示す説明図である.

1……器筐、2……固定軸、3……渦巻きばね、4……巻き取りドラム、5……吊紐、6……吊紐繰り出し抵抗調節機構部、7……導出口、8……重鎮、9、10……固定ピン、11……回動調節子、12……軸部材、13、14……可動ピン、15……係合小突起、16……係合凹部、17……コイルスプリング、18……指標.

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

日本国特許庁

昭和57年(1982)3月13日発行 意匠公報 (S)

572761 意願 昭55-35673 出願 昭55(1980)9月1日

登録 昭56(1981)12月25日

創作者 古屋憲男 川崎市多摩区千代ヶ丘4丁目2番2号

意匠権者 株式会社田島製作所 東京都板橋区小豆沢3丁目4番3号

意匠権者 古屋憲男 三島市中292-6

代理人 弁理士 野本陽一

意匠に係る物品 下げ振り用糸巻

説明 背面図は正面図と対称にあらわれる.

左側面図

〈省略〉

正面図

〈省略〉

右側面図

〈省略〉

平面図

〈省略〉

底面図

〈省略〉

A-A縦断面図

〈省略〉

(別紙第一)

物件目録A

一 物件の名称

下げ振りメイト

二 物件の構造

1(1) 器筐1内部に枢設した巻き取りドラム4に吊紐5の内端を連繋して捲回し、

(2) 該捲回方向に渦巻きばね3を弾性付勢して、繰り出した吊紐5を自動的に巻き取るようにしてなる

(3) 下げ振りの吊紐5の繰り出し機構部において、

2(4) 上記巻き取りドラム4の繰り出し部と器筐1の導出口7近傍とに固設した回転可能のローラ9'、10'間に、

(5) 器筐1に対して適宜回動位置に固定可能になるごとく枢設した

(6) 回動調節子11に、

(7) 小径パイプを貫挿して可動のパイプ孔吊紐案内部材27を設け、その両端開口の左右相反する端縁部を半円形の丸みをつけた二個の摺接縁部13、14とするとともに、

3(8) 上記二個の摺接縁部13、14と前記二本の回転可能のローラ9'、10'に対して吊紐5を経由摺接(ただし、ローラ9'、10'に対しては転接)せしめるように構成し、

(9) 吊紐5端に連繋した重量の異なる重鎮8に対して荷重に見合った摩擦抵抗力を持つようになる

(10) 吊紐繰り出し抵抗調節機構部6'を構成してなる

4 下げ振り。

三 図面及びその符号の説明

第1図は器筐の一側を外して一部切欠した正面図、第2図は第1図におけるA-A線断面図、第3図ないし第5図は吊紐繰り出し抵抗調節機構部の作用を示す説明図、第6図は一部を切欠した分解説明図、第7図は回動調節子11の回転状況を示す説明図(×は回転の中心を示す。)である。

1 器筐 2 固定軸

3 渦巻きばね 4 巻き取りドラム

5 吊紐 6' 吊紐繰り出し抵抗調節機構部

7 導出口 8 重鎮

9' 9" 9〓 10' 10" 回転可能のローラ

11 回動調節子 12 軸部材

13 14 摺接縁部 15 係合切欠

16 係合ストッパー 17 コイルスプリング

18 指標 19 木部用取り付け機構

20 刺ピン 21 摺動軸

22 コイルスプリング 23 刺ピン孔

24 アルミサッシ取付フック 25 永久磁石

26 案内ピン 27 パイプ孔吊紐案内部材

28 フランジ突設ピン 29 フランジ

第1図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第5図

〈省略〉

第6図

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第7図

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別紙第二

物件目録B

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実用新案公報

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意匠公報

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